書記 始季 前季 一季/二季/三季/四季/五季 /六季 /七季 終季 後季 来季
第七季
1 2
|
目覚めの前 まだまだ、妖夢は半人前ね。 白玉楼の姫、西行寺幽々子はおかしそうに笑う。 手ぬぐいを濡らし、額にかけるその顔は世話の焼ける子に手を焼く母親のようだった。 いつものキリッとした顔はなく、寝顔はまるで子供のようだ。幼い寝顔で規則ただしい寝息を立てる妖夢。数日前とは打って変わって顔色がよい。 そんなことを考えていると、この子はまだ死んでないのねと思う。 紅い霧の事件、妖夢は幽々子の願いをかなえるため紅魔館に乗り込み吸血鬼レミリア に戦いを挑んだ。しかし、度重なる戦闘の末のレミリア戦は過酷だった。 庭の長い階段、キツかったわ。妖夢も大きくなったものねぇ。 懐かしむ顔で寝顔をみつめ一撫ですると、桶の水を冷えたものへ替えにいった。 |
| ... ちいさな花 幽々子様、これは? 楼観剣の鞘の先にちいさな花がくくりつけられていた。 見るとそれはメルの花飾りによく似ていた。 「そのお花ね、妖夢が大事そうに持っていたの。 それで一輪挿しにして窓辺においていたんだけど、だんだん元気がなくなってきたの。 日に弱いのかしらと思っていろんなところにおいたのだけど・・・」 どこにおいても、元気が無かったそうだ。 「それで妖夢の枕元においてみたの、(なんだか死者のたむけみたいだったわ、) そしたら少しだけ元気になったの。 すぐにわかったわ。このお花寂しかったんだって――」 幽々子様は、私がいつも肌身離さず持っているようにと、鞘にくくりつけてくれたと言う。 そんなことをすればすぐに枯れてしまいそうなものだが不思議と元気になったそうだ。 それ以来、私の剣の鞘には一輪の花がくくりつけてある。 枯れること無く、いつも楽しそうに鞘の先で踊っているようだ。 時折、あの夜の出来事が夢だったのではないかと思うことがある。 鞘の先についた花が夢ではなく、現実だったと言い聞かせてくれる。 妖精メープル・パルマタムは確かに存在していた。 |
| ... 後書き ぶっちゃけ、この「小さな花」を書くために、長らく紅妖夢という物語を作りました ここにどうつなげるか、というのが大前提だったので、途中いけてない部分が多々あったと思います。 厳しい、意見などお待ちしております。初めてのSSに挑戦で、さまざまな直木賞作家の本を読んだり、 また、SSを読んで文の流れを研究したりとやったのですが、 あんまり実ってないかもしれないです。 至らないところも多々あったと思います。そのあたりを報告していただけると大変うれしく思います。 長らく、ありがとうございました。次回作に期待していただければ、至上の喜びです。 (2006/8/27 音流) ご意見お待ちしております。(誤字脱字なども報告いただけるとうれしいです。・・・(ウェブ拍手) |
| ... 以下、いれるか入れないか迷ったので、ここに掲載します。 変えられた運命 「あら、咲夜・・・もういいの? 「えぇ、おかげさまで。 数日前に現れた白い侵入者にこっぴどくやられた咲夜。 パチェと小悪魔の魔法により大分回復したようだ。 「お嬢様、あの侵入者の運命を変えたのですか? 「さぁ・・・ あの夜、死に掛けた・・・いや、死んでいたのかもしれない妖精を抱いた剣士は、 霧を止めろと言い張った。 本当は別の目的がある気がしたが、拒んだ私は戦いを挑まれた。 少しだけ運命を覗いてみると・・・ 一つの運命の歯車が崩れ始め、同時にもう一つの歯車の糧となろうとしている。 二つの歯車が一つになればすさまじい力が生まれるかもしれない。 それは、いささかよろしくない・・・ 崩れるたびに相手は力を増し、強くなっていった。 このまま歯車が崩れ去ると、私は敗れてしまう・・・ そう思い、崩れかけた運命の歯車を作り変え僅かに運命を生かした。 「まぁどちらにしろ、あれだけ懲らしめておいたんだから、もうこないんじゃない。」 「あら、殺さなかったんですか?」 「半分死んでたわ。」 あの崩れかけた歯車は、妖精のものだったのかもしれない。 ひとつの体に二つの運命の歯車など・・・ 歯車を作り変えた時に一瞬見せた隙、その時の表情はどこか嬉しそうだった。 |