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第二季 湖上の霧

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第二季 湖上の霧


ッ・・・ッル・・・・メルっ!!

気がつくと妖夢さんは心配そうな顔をして私を抱きかかえていた。

「私・・・

どうやら私は、妖夢さんのあまりにも早い動きについていけず気を失ってしまったようだ。

心配されていることに気がつき、少し照れた気分になった。

よかった・・・と安堵の息を漏らす妖夢さん、傍らにはルーミアが目を回していた。

こんなことでは妖夢さんと一緒にいけないな。そう思った束の間

「君はやはりここでおいていく」

私は一瞬何を言われているのか、理解しようとしなかった。

 

...

 

悲しそうな顔をしている。裏切られたと表現できなくもない。

目の前のちいさな妖精は大きな目に一杯の涙をためて、泣き始めた。

これから行くところは、こんなことでは進めない。足手まといになる。

そう判断した。

「絶対に邪魔になりません、一緒に行かせてください」

「だめだっ」と、言い放ち私は紅魔館に向かい飛び立った。

泣きながら追ってくる、なんて気分が悪いんだろう。

―ッ!! ―ッ!!

何事か叫んでいるが、私は聞く耳を持つ気はなかった。

こんなことではダメだ。

そんな風に意を決していると、目の前に羽の生えた少女が現れた。

追いついてきたメルが叫ぶ

「大妖精さまッ!!」

大妖精が何事かをメルに受かって言うと、詰まることなくメルは言い返した。

「私は、妖夢さんと運命を共にします!!」

それはありがた迷惑もいいところだ・・・

その後は、聞きなれない言葉で話していた。

少しの間ぼんやりとその光景を眺めていると、大妖精に話しかけられた。

「メルを助けてくれたことありがとうございます。メルのような妖精は数多く生まれ、

 またその命はとてもはかない。妖精は一度決めた相手を変えることはありません―」

なおさら連れて行けないなと思う。その相手になればつらい運命をたどる。

その後また、妖精の二人はなにか話し始めた。

大妖精に懸命に訴えるメル。なんで私は見届けているのだろう・・・

話がおわり、メルが話しかけてくる。

「この先に、氷の妖怪と言われるほど強い力をもった妖精チルノがいます。

 私がチルノに勝ったら、連れて行ってもらえますか?」

チルノ・・・先ほどのルーミアの好敵手とメルは言っていた。

だとするとメルが適うはずも無い。

勝算があるのかもしれない、しかしそれに勝てるなら、問題ないかもしれない。

「いいだろう」

少し悲しげな表情を見せた大妖精の顔が目についた。

 

...

 

チルノに勝つ、妖精の中で一番強いといわれることになる。

妖精メープルは、妖夢の足でまといにならないことを証明するため

氷の妖怪の異名をもつ氷精チルノに戦いを挑むことになった。

 

...

 

表情が伺えない・・・妖夢さん、私それでもあなたについていきたい。約束の人だもの。

「私は一切手出しをしない、負けたら引き返すんだ」

妖夢さんは言った。

チルノ・・・大妖精様でも手を焼くほど力をもった妖精。

陽気や暖気を好む妖精の中で氷の力を使う異端者。

自分の力がどれほど通じるのかわからない。でも・・・

「私、妖夢さんと一緒にいたい。それだけです」

妖夢さんは黙って先を見据え、わずかに顔を歪めると冷たい風が吹き始めた。

 

 



勝負は一瞬でつくと思った。

メルとチルノの力の差は愕然としたものだった。

チルノがよほどの馬鹿でない限りメルに勝利はないだろう。

相手は、氷や冷気を操る妖怪、メルは言葉の持つ力を少し強くする程度と聞いている。

あっ―

危うい場面、私は何度も声を発しそうになる。

いつの間にか不安と心配で一杯になっていた。

おいていこうと決めていた筈なのに、心のどこかで負けてほしくないと思う。

ちいさな体で懸命に戦う姿を見ていると情を誘うものだな・・・

「アタイに勝つなんて、かえるのべろより早いんだよ!!」

チルノの氷の散弾をよけきれず、グラリと傾いた。

それでも何とか持ち直す。でも、もう決着はついた・・・

その時

「とどめだ、雪符「ダイヤモンドブリザード」!!」

氷の散弾が、猛吹雪とともに勢いよくメルに襲い掛かる。

もう勝負はついているっ!!

「メルッ!!」

私は、いけないと知りつつ楼観剣を握り締めた。

「私は・・・・私はまけませーーーん!!!」

ひと際大きなメルの声がキィィィンと頭に響く。

同時にチルノの叫び声がきこえた。

何が起こったのかわからないがチルノはなにかに吹き飛ばされた。

チルノが馬鹿でなくても、メルは勝った・・・。

 

...
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