書記 始季 前季 一季/二季/三季/四季/五季 /六季 /七季 終季 後季 来季
第四季 つかの間の急速と、白い少女
1 2 3 4
|
運命を操る?そんなのできっこないよ!! ほんとだって、大妖精様が言ってたんだもの。 大妖精様が冗談をいったんだよ。 なぁー!! そうだ、そうだよ!! 違うよ、運命は変えられる!! 変えられるよ!! そうじゃなかったら私・・・ 第四季 束の間の休息と、白い少女 大きな屋敷、いくつかの別館に分かれている。 館の住民と見られる羽の生えた悪魔が数冊の本を抱えて出てきたので ドアが閉じきる前に誰もいないことを確認し、体を滑り込ませた。 人の気配はなく、妖気も感じられない。先ほどの悪魔の気配も徐々に離れていった。 大きな棚には所狭しと、本がぎっしりつまっていた。 ここは、書庫か・・・ あまり人の出入りの少ない場所と判断した私は少し休むことにした。 安心したせいか肩の傷が痛み始め顔をゆがめた 服をはだけ、傷の手当てをしようとするとメルが言い寄ってきた。 「大妖精様ほどではないのですけど・・・。」 ポォーと、メルの体が光りだしその光が傷を覆う。 「最初は少し痛いのでがまんしてくださいね・・・ 言うに早く鋭い痛みが走った後、徐々に痛みが和らぎ血も止まった。 僅かに血がにじんでいるが動かしても痛みはなく戦闘に支障はなさそうだ。 「すごいな・・・ 薬を塗り布を巻いて服をただすと、純粋にメルをほめた。 得意そうに威張るメルを小突く キャッキャッとはしゃぐメル。 さっき目覚めに私の傷を見て青ざめていたとは思えない。 なんだか妙におかしな気持ちになっていた。 ここは敵の陣地内だというのに、何でこんなに落ち着いているんだろう。 そんなひと時は長く続かず、冷ややかな声がそれを遮った。 「図書館では静かにしてほしいわ。 |
| ... 完全に気がつかなかったことを不覚に思っているのか、 先ほどと打って変わって緊張の面持ちの妖夢さん。 「ど、どこ?」 図書館の中は暗く、明かりがほとんどない。 妖夢さんもまだ声の出所を掴めないでいるようだった。 「こっちよ・・・」 後ろから声が聞こえ、勢いよく振り向いた。 「どこだッ!!」 そこには誰も居らず、妖夢さんの声だけが響く。 「ふふふ、この魔法は上手くいったみたいね」 突然目の前に、紫の髪をした青白い少女が現れた。 姿を現した少女は、持っていた本に何かを書きはじめた。 「空気中の水分レベルは3、光の強さ魔力ともに4ね・・館内の温度は常に・・・現在の時刻は・・・」 しきりに手を動かしながら何か呟き、時折顔を上げてはまた書きとめる。 妖夢さんは警戒を解かず身構え、突然現れた少女が顔を上げる度に身を強張らせた。 「ところで貴方たち、誰?」 少女は本から目を離さずに、聞いてきた。 わ、私は・・・ 妖夢さんはどうしていいかわからずシドロモドロになっている。 「あの、ここで何をしているんですか?」 私は、まずいと思い話題をきり返した。 「私?いつもは本を読んだりしてるわ。魔法の研究をして実験したりもするわね。 そうしてできた魔法を本にするの。たまにお茶をここで飲むけど、やっぱり本を読んでいるほうがいいわ。 説明している間もずっと本から目を離さず、私たちにあまり興味はないようだった。 「貴方はここで何をしているのかしら?」 私はここの―――、いきなり目的を言いそうになる妖夢さんの口をふさぎ。 「ここにたくさん本があると聞いて、興味があって見に来たんです。 すごく古い本も一杯あって・・・」 その言葉がよかったのか単に書き終えたのか、手を止めて私たちの方に振り返った。 「そうね、すごく古い本もあるわ。一体いつからここにあるのかわからないけど。 これだけの数をレミィが集めたとも思えないし、 この図書館は5百年以上前からあるんじゃないかしら。」 「レミィさん?」 「この屋敷の主よ。私の友人でもあるんだけど。」 「私は、そいつに話があるんだ。」 妖夢さん少し話の流れを考えてください。と思ったが注意するのもアレだったので 流すことにした。幸い変に思われなかったらしい。 「そう。じゃあ、まずは咲夜に会わなきゃね。 レミィがあんなだから実質咲夜がこの屋敷を仕切っているわ。 人が来たときも、持て成すのは咲夜の仕事。もちろんレミィを守るためでもあるんだろうけど・・・」 どうやらこの屋敷の主は「レミィ」というらしい、愛称だと思うけど・・・ そして付き人のような形で咲夜という人がいるということもわかった。 多分この人が夏を遮っている人だと思う。 「―――、それで咲夜に猫いらずを頼んだのだけど、今ひとつ効果がないみたいなの」 ずっと話していたみたいで、話がまずい方向にそれ始めている気がした。 私は、この人からいろいろ話を聞けるのではないかと思い、もう少し話をすることにした。 妖夢さんに邪魔をしないよう釘をさすと、話題を自然に変え始めた。 「そうですかぁ、まぁこんなに広い図書館ですから・・・」 「そうね、外から見るよりこの図書館は広いわ。空間をいじるのが好きな人がいてね―― 私は、この人は説明することと語ることがすきなんだと思った。 |
| ... 妖夢さん、私があの人と話している間、口を挟まないでください!! メルに釘をさされた。どうやら青白い少女からいろいろ聞きだすつもりらしい。 私は口より剣の方が得意なので、黙っていることにした。 ただそれを眺めているのも変なので、手近な本を読んでみることにした。 ―――素材のアクを効率よくとる方法 パチュリー・ノーレッジ――― アクとは、素材に含まれる不純物などが魔力などの干渉により表面に現れるもののことで、 まず、アクがどういったときにでるか検証し、それを取り除く方法を考える。 1、門番の育てる花の場合。 最初から危険なものを使うわけにはいかず、みじかでよく取れるものを材料にし実験を行う。 花は、僅かな魔力の干渉を受けただけで、軒並み倒れた。 後にわかったことだが、花たちは不思議な魔方陣を描いていた。 魔力の干渉により花たちの不思議な現象を知ることができた。 2、「紅」の場合 アクとは素材に含まれる不純物ということがこれまでの実験で判明している。 アクの強い「紅」の不純物を取り払えば、これまで以上の力がでると判断した。 今回は以前の実験のこともあり。魔力を使わず物理的な衝撃により、アクをたたき出すことにした。 レミリア・スカーレット(以下R)、フランドール・スカーレット(以下F)両人の協力を得ることにした。 何度かの衝撃を与えたがアクを出す方法は難しく、前回のこともあり あまり危険はできないと思い。 仕上げに少し強めの衝撃を与え実験を終えることにした。 Fレベル5、Rレベル4の力で衝撃を与えると、ついにアクはでた。 後に判明したことだが、それは素材の不純物であるアクではなく魂や精魂といったもので 3、スペルカードの場合。 前回の実験から、生物のアクを取り除くのは難しいと判断し。 素材を生物から無生物へと変えることにした。 スペルカードとは、魔力を凝縮したものであり―― 私は其処まで読むと、本を閉じた。 冥界の外はずいぶんおかしなことを考える人がいるものだと思った。 何気なく、本棚を眺めていると「死と無について」という本が目に留まった。 本を手に取り、読み始めた。 死と無は似て非なるもの、死ぬことと無に帰ることは同一視されるが全く違うことなのだ。 私は文字を追いながら、大妖精の話を思い出していた。 メープルは夏まで生きられない。死ぬ運命なんです。 妖精は人間とは違い、死ねば冥界に来るわけではないらしい。 輪廻という概念を持たず。季節がひとつの輪廻の役割をするらしい。 自然の多くは季節によって生まれ、冬の妖精は冬になるとどこからともなく現れ。 春になると、また消える。そして、また冬が来ると現れるそうだ。 つまり、自然が消滅しない限り、妖精に死は訪れない。 しかし、メープルは。死んでしまう。 死ねば、輪廻をめぐり新たな生としてまた生まれ変わる。それは人間の話。 妖精は、自然という無に帰ってしまう。 妖精は存在そのものが魂であり、魂そのものが死ぬことになるからだ。 チルノとの戦いの後、気を失ってしまったメル。 「原因はわからない、このまま目を覚まさないかもしれません。 せめて最期まで一緒にいてあげてくれないでしょうか?」 その言葉だけが、はっきりと耳に残っている。 私は冥界のものだというのに・・・ 「運命?運命なら簡単に変えられるわ。だってレミィの能力は運命を操る能力だもの」 私の耳に残った言葉はその一言によって書き換えられた。 ――運命なら簡単に変えられるわ。 |
| ... ケホッケホッ・・・・ 「少し長く話し込んでしまったわ・・・。 そういえば結局何者なのか聞きそびれてしまった。 図書館で静かにするものに悪い奴はいない。私はそう考えている。 本の修理をしていた小悪魔のリートが帰ってきた。 「ただいま戻りました。少し時間が掛かりましたけど、きれいになりましたよ。 「そう、よかったわ。そこに直しておいて。 本棚を指定すると、また本を読み始めた。 「あら? どうしたの?と顔を上げると、本の位置が少し変わっていたらしい。 そういえば、先ほどの客の一人が本を読んでいた気がする。 「誰かいらしてたんですか? 「妖精が迷い込んでいたんでしょ。」そう言うと、特に気にするでもなく本を整理し始めた。 「リー・・・レミィって死ぬ運命を変えられるのかしら? 「そうですねぇ・・・・死ぬ運命に、変えることはできるんじゃないでしょうか」 なかなか上手いことを言う・・・そう思い、少し笑みをこぼした。 「それも、そうね。」 |